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執筆者の写真中島 祐哉

令和のウイスキー・スタンド/MADURO - 日比谷オクロジ

これが令和の新スタイル、高架下のクラシカル・スタンディングバー。

最新の商業スポット「日比谷オクロジ」を楽しむのに欠かせないウイスキー・スタンドを覗いてみた。



9月にオープンしたばかりの「日比谷オクロジ」は、JRが提供する最新の高架下アミューズメントスポットだ。場所は有楽町駅から程近く、コリドー街の裏側に当たる通り。高架下ながらほぼ屋内として作られており、飲食店のほか最新のファッショナブルストアが立ち並ぶ。



本日のバー「マデューロ」はそんな日比谷オクロジのメインスポットとして注目を浴びる。

複合商業スポットにバーが入るというだけでも珍しいのに、それがウイスキーハウス、しかもスタンディングオンリーというのだから通りを歩く人たちも立ち止まらずにはいられない。



取材前に想像していた、ウイスキーバーの緊張感漂う店構えとは正反対の印象。高級感がありながらも間口は大きく開かれており、フレンドリーなスタッフが「ご覧になるだけでもどうぞ」と声をかけてくれる。


入店すると驚かされるのはやはりウイスキーの品ぞろえ。シングルモルトをメインに、オフィシャルボトルだけを取り揃えている。

メニューは無く、ボトルの前に1ショットの値段が書かれている斬新なスタイルだ。



ウイスキーファンにはたまらないレア物も取り揃えており、オーナーが愛するアードベッグは日本に数本と言われる激レア品を用意。お目にかかるのも中々難しい一本だ。

1ショット12,000円と超高級品だが、既に1本空けられたとか
 

ウイスキーハウスではあるが、ハッピーアワーはビールがお得。筆者の大好きなキルケニーの生があったため、まずはそれからスタートした。


ギネスと並びアイリッシュエールの代表格のキルケニー。特徴はクリームエールの名に相応しい泡の濃密さと、それに反してスッキリと軽やかな甘みの味わい。

ハーフパイントから用意されている点もサクッと立ち寄りやすいポイントだ。



店内はオールスタンディングで、カウンターのほかテーブルもありカジュアルに使いやすい。


利用客の声としては、まずこれだけの品ぞろえのバーでチャージがかからない点が一つ大きな魅力。また、腰を据えて飲んでしまうとついつい終電を逃してしまうバー・フリークにもスタンディングなら安心だ。待ち合わせや、他のオクロジのご飯屋さんが空くまでのウェイティング・バーとして利用する方もいるらしく、楽しみ方は多種多様だ。2軒目、3軒目としてじっくりと語らう由緒正しいバー・スタイルだけではもうないのだろう。


インパクトある壁紙で写真を撮りたくなってしまう

店内にはスロージャズのBGMが微かに流れており、それが十分聞こえるくらいの気持ちの良い静けさ。静かすぎて忘れていたがここは高架下。しかも新幹線が通る線路であるそう。新幹線の下で飲める店というアイデンティティも中々乙なものだ。


 

2杯目にどのウイスキーを頼むか悩んでいたら、店員さんだけでなく、隣で飲んでいたアードベッグ・フリークの方が色々と教えてくれた。こうした出会いもバーの醍醐味だ。


お店のイチオシは、スコットランドで最も売れているシングルモルト「グレンモーレンジ」。


シンボルのキリンは、最も背の高い蒸留器を使って製造しているこだわりを表したもの。背の高い蒸留器を登りきれるほどの軽やかなアルコール蒸気だけを抽出することで、そのフルーティーな香りを実現しているそう。


ちなみに、当サイトでもよく紹介しているバーボン・ウイスキーは、新品の樽の内側を焦がして原酒を投入していくのが伝統的な製法。一方スコッチは、そのようにバーボン作りで役目を終えた樽を再利用する場合がある。グレンモーレンジはまさにバーボン樽で熟成されたものなのだそうで、バーボン好きとしては縁を感じてしまう。


金色に輝くボトルにも惹かれ、半分ジャケ買いのような気分でロックでオーダーした。


筆者はスコッチにはそれほど親しんで来ていないのだが、これまで飲んだことのあるものと比べてどことなくカラメルのような甘みを感じる。バーボン樽で熟成された故かもしれない。甘みの奥に強い香りを感じるのがクセになりそうだ。


ロックは少しずつ氷と解け合っていく味の変化が楽しめる。個人的には、5~10分程度経ってきた頃の柔らかい味わいが好みであった。



ちなみにマデューロでは1ショットを40mlとしており、一般的な30mlと比べお得な点も見逃せない。

ハーフショットも用意されており、試し飲みにはもってこい
 

銀座や有楽町を楽しんだ帰り際のお客さんも多いようで、お年寄りの方や年配のご夫婦が連れ添って店内を覗きに来るのがとても新鮮な感覚だ。


印象的であったのが、とあるご老人のエピソード。昔、空港のラウンジでたまには贅沢をしようと頼んだ銘柄が、偶然このお店に置いてあったという。

おそらく今ほどのネット社会ではなかったはずの当時、気に入ったウイスキーに出会っても、後から名前を調べることは難しかったであろう。しかし、ボトルの姿と、何より味は記憶を蘇らせるはず。


普段なかなか路面店やビルの一室にあるバーに足を運べない方にとって、マデューロのように気軽に立ち寄れるウイスキーハウスは記憶との出会い、そして新たな扉になってくれるのだ。


筆者がロンドンパブの資料集を見てその美しさに衝撃を受けたときのように、マデューロが誇るウイスキー・コレクションを見てまた一人ウイスキーを愛する人が生まれるかもしれない。

そんな風に考えると、令和に生まれたこのウイスキー・スタンドに、感謝の気持ちでいっぱいになった。


 

WHISKY HOUSE MADURO(ウイスキーハウスマデューロ)


東京都千代田区内幸町1-7-1日比谷OKUROJI内

TEL 03-6268-8068

アクセス

 JR有楽町駅 日比谷口から徒歩6分

 JR新橋駅 日比谷口から徒歩6分

 東京メトロ銀座駅 徒歩6分

営業時間

 平日15:30~23:30

 土日祝14:00~23:30

定休日

 なし




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